離婚することになると、慰謝料や財産分与…子どもがいれば養育費などを話し合いますよね。
ちゃんと話し合って、お互い納得できた!ちゃんと払ってくれると言ってくれて安心!
なんて思っていませんか?駄目ですよ!!
残念なことに、約束していたはずなのに払ってくれない…途中から払ってくれなくなった…約束したのに…という場合があるのです。
なぜなら、口約束のままでは払ってくれなくなっても罰則はないし、何より約束した証拠がないからです。相手が誠実な人ならしっかり払ってくれるのでしょう…でも誠実な人なら離婚しているでしょうか?相手を信じすぎてはいけません。
ここではもし相手が払ってくれなくても、払ってもらえるようにしておく対策を紹介します。ただ、対策をするにも費用もかかってしまうし、少し間違えると相手に払わせる効力が無くなってしまう場合があります。対策を行う上での注意点や、メリット・デメリットを知っておきましょう。
本当は約束したことなら口約束でもしっかり果たしてもらいたいですけどね!
離婚協議書
離婚協議書とは、離婚をめぐって夫婦で決めた事柄を記載した書面のことです。
協議書で定めた条件は守らなければいけない義務が生じるので、誓約書と同じ効力を持ちます。
記載する内容は、「離婚合意の成立」「親権者の指定」「養育費」「財産分与」「慰謝料」「年金分割」などを書くのが一般的です。
ただ離婚協議書には決まった形式はなく、横書き・縦書き、手書き・パソコンで作成するなどどんな書き方でも良いし、用紙にも決まりがありません。
最後に日付と住所、署名(手書きが無難)、押印を必ずします。これを2部作成し、自分と相手方が1部ずつ保管しましょう。
こうして離婚協議書を残しておくことで、決めた内容をお互いに確認出来るようにしておくことで、トラブルになるのを防ぐことが出来ます。協議書を作成しなければいけない決まりはありませんが、金銭面で決めたことがあったら必ず作成しておきましょう。
もし慰謝料などの支払いが滞った場合、作った協議書を基に再度相手に請求を促しましょう。
ただ相手が話し合いでしっかり払ってくれなかったら、裁判で支払いを促すことになります。決めた約束はきちんと守ってもらいたいですね。
公正証書
支払いが滞ったとき、離婚協議書に効力があっても一度裁判を起こさなくてはいけませんが、公正証書を作成しておけば裁判を起こさなくても強制執行で相手に支払わせることが出来ます。
ただし、強制執行を行うためには注意しなければいけない事があります!
せっかく公正証書を作ったのに強制執行出来ない…のでは意味がないですよね。そして作成するにも無料では作れません。費用がかかります。
公正証書を作成するまでの流れと、作成する際の注意点や作成するデメリット、強制執行を行う手続き方法を知っておきましょう。
公正証書の作り方
- 離婚協議書
- 本人確認書類
- 家族全員が記載されている戸籍謄本
- 不動産登記簿謄本と固定資産評価証明書(不動産について財産分与を行う場合)
- 車検証(自動車について財産分与を行う場合)
- 基礎年金番号の分かる年金手帳または年金情報通知書(年金分割を行う場合)
- 委任状(弁護士に依頼する場合)
まず夫婦で離婚の条件に合意出来たら離婚協議書を作成します。それが公正証書を作成する第一歩です。
その他の必要な書類も準備出来たら、公証役場に問い合わせて訪問の日程を決めます(公証役場は平日のみ)。加えて、公証役場には夫婦2人で行かなければいけません。
公証人が認めたときは代理人が手続きを行える場合がありますが、基本は取り決めた条件を夫婦共に確認しながら作成しなければいけないので、代理人による作成を認めない公証役場もあります。事前に問い合わせて確認しておきましょう。
公証役場に訪問したら公証人に必要な書類を渡し、質疑応答を行われた後、公証人によって公正証書の原案が作成されます。
原案の完成までは1週間ほどかかり、場合によっては上記の資料以外にも提出を求められるかもしれません。
公正証書の原案が完成したら公証役場で確認し、内容に間違いがなければ署名・捺印をして公正証書の完成です!
また、公正証書は3種類作られます。原本は公証役場で20年間保管され、正本は金銭給付を受ける権利のある人に交付、謄本は金銭給付義務だけのある人に交付されます。
この正本は失くしても再発行されないため、必ず失くさないよう大切に保管しましょう!失くしてしまうと強制執行が出来なくなってしまいます!大変!!
公正証書を作る上での注意点
公正証書を作成すればいざという時に強制執行が出来る…とお伝えしましたが、強制執行を行うためには絶対に必要なことがあるのです。
それは、『強制執行文言』をきちんと記載することです。
例:『…に記載の債務履行を遅滞したときには直ちに強制執行に服する旨陳述した』
上記のような文が公正証書に記載していないと強制執行が行えず、支払いが滞ったら裁判所に申立てをしないとならず、時間もお金もかかってしまいます。
強制執行が出来なくても重要な証明にはなるので、裁判で有利にはなりますが…せっかく作るなら面倒な裁判をしなくても払ってもらえる方が良いですよね。
公正証書を作成する際は、公証人としっかり話し合って強制執行の効力を持った公正証書を作るか、それでも心配な場合は、弁護士か行政書士に相談・依頼して作成した方が良いかもしれません。
公正証書を作るデメリット
強制執行の効力がある公正証書を作成すれば、強制執行が出来るのは大きなメリットです。一方、作成するデメリットは何があるのか…考えてみましょう。
作成に必要な費用
公正証書の作成には公証人手数料必要で、それに加えて公正証書の交付・送達などにも費用が必要となります。
この手数料は、政府が定めた「公証人手数料令」という政令により定められていて、どこの公証役場でも同じ費用となっています。原則として公正証書で決めた財産分与、慰謝料、養育費などの10年分の合計額で決められています。
- 100万円まで 5,000円
- 200万円まで 7,000円
- 500万円まで 11,000円
- 1000万円まで 17,000円
- 3000万円まで 23,000円
- 5000万円まで 29,000円
- 1億円まで 43,000円
- 3億円まで 43,000円+超過額5000万までごとに13,000円を加算
- 10億円 95,000円+超過額5000万までごとに11,000円を加算
- 10億円以上 249,000円+超過額5000万までごとに8000円を加算
- 確定日付の付与 1通につき700円
- 執行文の付与 1,700円
- 正本・謄本の送達 1,400円
- 送達証明 250円
- 正本・謄本の交付 1枚につき250円
となっています。公正証書で取り決めた金額が多ければ多いほど、手数料も高くなります。
さらに、作成を弁護士や行政書士に相談した場合はその費用もかかってしまうので、本当に公正証書を作った方が良いのか…お財布と相談して決めましょう。
強制執行の手続き方法
もし公正証書で決めた金額を支払ってくれず、強制執行を行うときの手続き方法をまとめます。
①金額を支払う側へ公正証書の謄本を送達し、送達証明書を交付してもらう
強制執行する場合には、相手が謄本を受け取っていることの証明書が必要です。それが送達証明書になります。
公証役場で手続きをしないと交付してもらえません。もし自分が相手に直接送り、配達証明を発行してもらってもそれでは効力がありません。
ここで注意しなくてはいけないのは、強制執行をするときではなく公正証書を作成した際にすぐこの手続きまで済ませておくことです。
必ず忘れずに、公証役場で手続きをしておきましょう。もし公正証書を作成する際に相手も同席している場合は、公正証書謄本を直接手渡しする「交付送達」手続きを行います。
②公正証書の正本に執行文を付与してもらう
強制執行を行う前に公証役場に行き、公正証書に執行文を付与してもらわなければいけません。
何故なら、公正証書に支払いが滞った場合に強制執行が出来ることを書かれていても、それがいつなのかは読んだだけでは分かりません。公正証書だけでは将来支払いが滞ったときに強制執行が可能であることが書かれているだけなのです。
そこで、今支払いが滞っていて、強制執行を行える状態だと証明してもらわなければいけないのです。それが「執行文の付与」です。手続きは、公正証書を作成し、原本を保存している公証役場で行います。
③相手の住所地を管轄する地方裁判所に申立てをする
執行文の付与が出来たら、地方裁判所に強制執行の申立てを行います。
相手方の何の財産を差し押さえるのかは裁判所ではなく、強制執行を申立てる人が決めるのですが、大体は給料の差し押さえを行う場合が多いようです。
申立ての後は裁判所が差押命令を発し、相手方か給料を差し押さえる場合は会社に債権差押命令正本が送達されます。取り立て自体は裁判所ではなく、申立人が取り立てを行うので、給料を差し押さえる場合は会社に直接連絡をします。これで強制執行の完了です!
まとめ
公正証書を作れば強制執行が出来るようになる代わりに、作成には時間も費用もかかってしまいます。
そして夫婦で相談しながら作成しなくてはいけません。もう別れたい相手と冷静に話し合うのは難しいかもしれませんが…今後の生活のために口約束で終わらせておきたくない問題ですね。
当サイトでは以下の記事もあるので、気になる方はぜひご覧下さい。
きちんと払うべきものは払う、約束したことは守る…最後ぐらい誠実な対応をしてもらいたいものです。
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